医療・ヘルスケア業界におけるビッグデータの活用事例20選

医療

昨今、ビッグデータはその利用価値を見出され様々な業界で注目されています。医療・ヘルスケア分野においても非常に注目されており、医療ビッグデータを活用した取り組みが盛んになってきました。今や多くの医療機関がビッグデータの分析や研究を行っており、ガンと遺伝子の関連性の解明や、医療技術の発展、新薬開発などの様々な面から医療ビッグデータの有効性は期待されています。研究が進むことで、これまで防げなかった病の予防や、効果的な治療方法がなかった病も治療できる可能性が高くなり、医療関係者以外からも、その期待の声は日に日に高まっています。当記事では医療ビッグデータを活用している企業やその取り組みを、国内外問わず紹介させて頂きます。

「産学連携・クロスイノベーションイニシアティブ」大阪大学大学院 日本

クロスイノベーションイニシアティブn/strategicandcross
http://www.osaka-u.ac.jp/ja/academics/graduate

大阪大学の同研究に日本生命保険相互会社が参画し、両社の所有している医療ビッグデータを活用した健康増進や健康寿命延伸の研究に取り組んでいます。日本生命では様々な疾病や治療に関する研究を行うことから、発症者の共通点などの分析を進めることによる、予防医療や特効薬の開発にも期待が出てきました。同研究の研究科長は再生医療の第一人者である澤芳樹氏が務めており、ビッグデータの分析や研究が進むことで再生医療の発展も十分期待できます。再生医療が進むことで、健康寿命が劇的に延伸する可能性も考えられ、注目すべき取り組みであることは言うまでもありません。

「産総研・早大生体システムビッグデータ解析オープンイノベーションラボラトリ」産業技術総合研究所、早稲田大学 日本

産総研・早大生体システムビッグデータ解析オープンイノベーションラボラトリ
https://unit.aist.go.jp/cbbd-oil/

同社は国内生物のビッグデータを統合解析し、活用に繋げる基盤体制を構築すると発表しています。同研究では、がん転移と遺伝子との関係をリアルタイムで分析し、腸内に生息する無数の細菌群と疾患の関連性を解明していく計画を推進しています。近年、細菌群がガンの原因と推測されていますが、未だその関連性は解明しきれていない為、同研究で新たな事実が解き明かされればガン発症のメカニズムが解明できるかもしれません。それにより、特効薬の開発、予防、発症の予測などが可能になり、ひいてはガン死亡率の低減も期待されます。

「ヒトゲノム計画」米国のゲノムセンター及び国際ヒトゲノム配列コンソーシアム組織 アメリカ他

ヒトゲノム計画
https://www.sumitomo-chem.co.jp/rd/genome/about.html

「ヒトゲノム計画」とは全てのヒトゲノムを解読し、人の遺伝情報を明らかにすることで医学などの分野で役立て、医療分野の遺伝子治療を推進させるための国際計画です。同研究は2003年に99.9パーセントの解読を完了しました。その後、より正確なゲノムの特徴解明を行い、ヒトにしかない免疫や臭覚、生殖関連の遺伝子や、逆に機能を失った遺伝子などが発見されました。同計画で解明された、ヒトにしかない遺伝子情報は、免疫性の疾患などの研究や治療方法確立に活用されていきます。

「National Health Service」英国マンチェスター地域の病院 イギリス

nhs

国民保健サービス(National Health Service)とマンチェスター地域の病院は、ヘルスケアサービスを向上させるための共同開発を行っています。国民保健サービスは6,000万人以上の患者を抱えており、同社が所有している検診と医療ビッグデータを分析することで、疾病予防や医療費削減を目指しています。共同開発として、生活習慣病患者の重症化や合併症の予防医療開発などが行われています。現代病として全世界的に生活習慣病の患者は増えている為、予防医療が開発されることで医療費削減などに繋がると考えられています。

「臨床試験の詳細データの公開」企業名/グラクソ・スミスクライン社 イギリス

臨床試験
http://www.gsk.com/

製薬大手であるグラクソ・スミスクライン社は、これまで自社が開発した薬の臨床試験の結果を非公開にしていました。しかし、臨床試験を受けた患者を匿名化し、研究者が臨床試験の詳細データにアクセスできるシステムを開発して、現在は過去の臨床試験の詳細データも含め研究者に公開しています。その為、グラクソ・スミスクライン社が保有する医療ビッグデータは研究者の手により分析、利活用することが可能となり、医療研究に大いに貢献しています。

「タミフルなどの薬剤に関する臨床試験データの公開」企業名/ロシュ スイス

臨床試験データ
http://www.roche.com/

スイス大手製薬メーカーのロシュは、タミフルなどの自社承認済みの薬剤に関する臨床試験のデータを公開しています。それにより、良質な薬剤が多くの医療機関で選別されるようになり、副作用の減少に繋がりました。また、これまでの創薬プロセスの改善などもされています。より副作用が少ない薬剤が選別されることで、副作用で苦しむ患者の減少にも繋がっていきます。今後も医療分野で様々な改善や、イノベーションの加速を促すことを期待されています。

「医療福祉分野のデータ公開」イギリス保健省 イギリス

医療福祉
https://www.gov.uk/government/organisations/department-of-health

医療福祉サービス向上の為、イギリスの主要17省庁はアクションプランの一環として医療福祉のビッグデータをオープンデータ化しました。公開されたビッグデータには、政府統計局の各種統計データや医療福祉分野のデータなどがあり、非常に充実しています。その内容を分析することで、昨今の医療福祉分野の改善点や、今後予想される問題点を浮き彫りにすることができ、分析結果を踏まえたより良い医療福祉サービスづくりに一役買っています。

「がんに関するデータの公開」イギリス公衆衛生サービス(Public Health England, PHE) イギリス

Public Health England
https://www.gov.uk/government/publications/health-matters-preventing-bowel-cancer/health-matters-improving-the-prevention-and-detection-of-bowel-cancer
https://www.gov.uk/government/organisations/public-health-england

ガンの早期予防や創薬の発見に繋がることを期待し、イギリス公衆衛生サービスは、これまでに収集したガンに関するデータを公開しています。公開されているデータは「世界最大のガンに関するデータ」と呼ばれるほどのビッグデータであり、ほぼリアルタイムで国営保健サービス(National Health Service, NHS)から収集されています。過去30年間(約1,100万人)の記録や、組織病理学のレポートなど、ガンに関する6種の重要なデータが公開されており、ガン治療などに関して非常に高く貢献しています。

「The Health Data Initiative」ワシントンの米国医学研究所 アメリカ

The Health Data Initiative
https://www.hhs.gov/idealab/health-data-initiative/

The Health Data Initiativeでは官民共同によるデータをオープンデータで公開しています。この医療ビッグデータをソフトウェア開発者などが活用することで、医療分野に有効なサービスの開発が期待されます。ソフトウェア開発者以外にも、民間企業での地図と医療データとのマッピングや、市民の医療サービス充実度をモニターするためのダッシュボードを設置するなどに多岐にわたって利用されており、市民の健康促進に役立つ存在にもなっているのです。

「アルツハイマー病患者の全ゲノム解読データの公開」Alzheimer’s Association Interactive Network(GAAIN) アメリカ

アルツハイマー病患者の全ゲノム解読データ
http://www.gaain.org/

アルツハイマー病患者の早期発見に繋がるよう、アルツハイマー病の研究を行っているAlzheimer’s Association Interactive Network(GAAIN)などの研究機関が、病患者800人の全ゲノム解読データを公開しました。データ量にして200TBもの情報が、同機関を通じてアクセス可能となっています。今後、保有されているゲノムデータを解析することで病患者の早期発見や、効果的な治療方法の確立が期待されています。

「Amazon Web Services(AWS)」国立衛生研究所(National Institutes of Heath、NIH) アメリカ

National Institutes of Heath
https://www.nih.gov/

Amazon.comと国立衛生研究所の共同により、Amazon Web Services(AWS)を介し、大規模な遺伝子調査プロジェクトが行われています。Amazon Web Services(AWS)には世界の75ヶ国以上の企業や大学が参加している1,000のゲノムプロジェクト(データ量200TB)ものビッグデータが存在し、Amazon Web Services(AWS)のクラウド上でアクセスし研究が出来るようになっています。この大規模な遺伝子調査プロジェクトにより遺伝子の謎は解明されてきています。ビッグデータによる遺伝子解析で切り拓かれる成果は、もはや医学医療を大きく変貌させようとしています。

「遺伝子とガンとの関連に関する研究」フレデリック国立がん研究所 アメリカ

遺伝子とガン研究
https://ncifrederick.cancer.gov/Default.aspx

フレデリック国立がん研究所では、遺伝子とガンの関連を研究しています。同研究にビッグデータを役立て活用するために、オラクルが提供する「Oracle Big Data Appliance」とCloudera Incが提供する「Cloudera Distribution of Apache Hadoop」(CDH)をベースにした最先端のシステムを開発しました。このシステムにより遺伝子とガンの関連性を分析、研究しています。同システムは「政府機関ビッグデータソリューション賞」も受賞しており、その高い機能は大変評判です。最先端システムの利用により研究は日夜進んでいます。

「医療機器のネットワーク接続化」フランスのクレルモン・フェラン大学病院 フランス

医療機器のネットワーク接続化
http://www.itn.co.jp/?p=985
https://www.chu-clermontferrand.fr/internet/default.aspx

クレルモン・フェラン大学病院では、ネットワーク接続された医療機器を導入しています。同医療機器はMicrosoftと電子医療機器メーカーCapsule Technologieが協力・開発しています。導入したことにより、従来よりも患者の医療データが迅速且つ効率よく収集することが可能になりました。モバイルのアプリから看護師が患者のデータを医療機器やツールを通してシステムに直接送信することにより、仕事の効率化が図られ、より質の良い医療的ケアを提供することが実現しています。

「MD Insider」デイビッド・ノリス氏にて設立 アメリカ

MD Insider
http://www.mdinsider.com/

MD Insiderは患者と医師のマッチングサービスです。患者がより良い医療ケアを受けられるよう、850,000名(2016年11月現在)の医師のパフォーマンスや評判などのデータが登録されています。このサービスにより、患者は最適なケアを受けられるようになっただけではなく、不要な検査の削減にも繋がっています。不要な検査及び過程を削減したことで医療費抑制にも一役買っており、2億5千万人もの患者が同サービスを利用して医師を選択しています。

「IBM InfoSphere Streamsを活用した新生児医療システム」オンタリオ工科大学 カナダ

新生児医療システム
https://www.uoit.ca/

カナダのオンタリオ工科大学はIBMのInfoSphere Streamsを活用し、新生児の測定データから容態急変を早期に発見するプラットフォームを構築しました。これは医療現場においては大変画期的で、言葉で体調の変化を伝えられない新生児にとっても、治療する医師にとっても、なくてはならないパートナーと言えるでしょう。今では新生児の体調の変動を常時把握することができ、最大24時間前には容態急変の兆候を判断できるため、新生児の生命維持に大きな役割を担っています。

「Patientslikeme」米国の患者体験共有サービス アメリカ

Patientslikeme
https://www.patientslikeme.com/

患者が自身の病気についてサイトに投稿し、情報を共有できるサービスです。Patientslikemeでは投稿された患者の医療データを収集し、医療研究に繋げる活動をしています。20万人以上ものユーザーから毎日投稿される膨大な医療データは、40以上の調査研究機関が分析と利活用しています。その成果の1つとして、筋萎縮性側索硬化症の患者の毎日の投稿により、リチウムを用いた治療は全く効果が無いことを証明することに至りました。同サービスを活用することで、臨床実験を行うよりも低コストで治療法の検証を行うことができるのです。

「喘息の原因を特定」ケンタッキー州ルイビル市 アメリカ

喘息の原因
https://louisvilleky.gov/

ルイビル市ではアメリカ全土の平均値よりも喘息患者が多く、その原因究明のためのプロジェクトが発足されました。調査方法として、GPSやセンサーがついた吸入器を喘息患者500人以上へ配布し、発作で吸入器を使用した際の、位置情報や環境データを自動的に収集し分析できるようにしました。結果として、喘息の発作が起こりやすい地域を特定することに成功、場所が特定されたことで症状の重い喘息患者はより一層注意を払うことができるようになりました。

「救急患者の入院期間の短縮化」ロサンゼルスの病院とボストンの病院の協同研究 アメリカ

救急患者の入院期間の短縮化システム
https://www.trivoxhealth.com/home.html

ロサンゼルスとボストンの病院では、患者の心拍数や呼吸をモニタリングできるようにした結果、リアルタイムで患者の容態悪化が把握できるようになりました。患者の異常事態に早く気付けるようになったことは重症化を防ぐことに繋がり、入院患者の平均入院期間を約9%削減、集中治療室に運ばれた患者の治療期間は従来の半分程度に短縮されました。容態悪化に早急に気付き、適切な処置が施されることは、重症化を防ぐだけではなく後遺障害の発生率や度合いを削減することにも繋がっており、今後も効果を期待されています。

「EMR(電子診療情報)の導入」フロリダの病院 アメリカ

EMR
http://ahca.myflorida.com/medicaid/ehr/

EMR(電子診療情報)の導入により、調剤業務の効率化が図られました。従来、薬剤投与の記録や、やり取りに関しては全て紙媒体で行われていましたが、ヒューマンエラーが多発している状況でした。医療関係の仕事にとってヒューマンエラーは、まさに人命に係わる重大な事態に発展する可能性が高く、問題視されていました。しかしEMR導入後は、医療スタッフが患者へ処方した薬剤の記録がリアルタイムで薬局側にも更新されるようになり、時間の短縮及びヒューマンエラーの削減に繋がりました。

人命を預かる医療機関や研究機関にとって、医療ビッグデータとは医療の発展に欠くことのできない価値のある情報です。ビッグデータを分析することは、新たな事実の解明に繋がるだけではなく、作業の効率化やヒューマンエラーの削減など多くの患者の命を救うことになります。今回ご紹介した事例のように、これまで医療ビッグデータを活用した様々なシステムが開発され、効果と結果を残してきました。一人でも多くの命を救い、最適なケアを施せるよう、医療ビッグデータを活用したシステムが全世界的に普及していくことが期待されています。医療・ヘルスケア業界には未だ解明されていないことも多い為、更なるビッグデータの分析と活用が必要になってきます。その為、今後もビッグデータを活用した技術が発展していくことが予想されています。