金融業界におけるビッグデータの活用事例20選

金融

金融業界でのビッグデータの活用は既に競争戦略上欠かせないモノになりました。スマートフォンやタブレットといったモバイルデバイスの普及と、ビッグデータアナリティクスを行い有益なインサイトを得るためのテクノロジーとリソースがかつて無い程安価に利用可能になった結果、金融業界に大きな変化が起きています。「Fintech」というキーワードを昨今よく耳にしますが、テクノロジーを用いて、これまでの金融ビジネスや既存の事業者をディスラプトしようとするビジネスモデルやスタートアップが続々と登場しています。今回の記事では海外のフィンテック企業のサービスを中心に、ビッグデータによって変わりつつある金融サービスや業界の様子を紹介していきます。

クレジットスコアの民主化を「Credit Sesami」企業名/Credit Sesame アメリカ

CreditSesami
https://www.creditsesame.com

Credit Sesamiはアメリカ合衆国サンフランシスコ発のFintechベンチャーです。彼らが提供するのはクレジットスコアの可視化です。ユーザーは登録時にソーシャルセキュリティーナンバーやCredit Sesamiが用意した質問に回答します。Credit Sesamiは蓄積する自社のユーザーデータと、既存の与信審査会社から得られるクレジットスコアを分析することで、ユーザーにクレジットスコアを共有しつつ、スコアを向上させる為の助言を行います。スコアに応じて、より良い条件のローンへの借り換えを斡旋したり、クレジットカードをお勧めするといった付加価値のあるサービスも提供しています。

CtoCローンのマーケットプレース「Prosper」 企業名/Prosper アメリカ

Prosper
https://www.prosper.com/

Prosperはアメリカ合衆国サンフランシスコ発のFintechベンチャーです。彼らが提供するのは個人向けローンのオンラインマーケットプレースです。融資を受けたい個人と、金融商品として債権に投資を行いたい投資家を結びつけます。Prosperはマーケットプレース上で成立した過去の融資・返済のデータから、新しく融資を希望するユーザーのクレジットスコアを独自に決定し、貸出利率を決定し、金融商品化し投資家に販売します。投資家はProsperが測定した借り手のリスクに応じてリターンが異なる商品の中から、投資対象の毛選定・意思決定を行います。ビッグデータを活用した正確なスコアリングにより、ユーザーにとってはフェアな利率、投資家にとっては信頼できる情報を提供することができ、多くのマッチングを実現しています。

CtoCローンのマーケットプレース「Lending Club」 企業名/Lending Club アメリカ

Lending Club
https://www.lendingclub.com/

Lending Clubもアメリカ合衆国サンフランシスコ発のFintechベンチャーです。彼らが提供するのもローンを借りたいユーザーと、債権に投資をしたい投資家をマッチングするプラットフォームです。従来の消費者金融の事業者は借入を希望するユーザーのリスクを評価する為の材料や技術が不足しているが故に、借り手に本来の返済能力以上の利率を求めざるを得ませんでした。しかし、ビッグデータ解析といったテクノロジーの活用により、借り手はこれまでよりも低い利率で融資を受けることが可能になりました。投資家にとっても利率(リスクも)が比較的高い消費者ローン債権に投資出来る機会が拡がりました。

中小企業の資金調達をスピーディに「OnDeck」 企業名/OnDeck アメリカ

OnDeck
http://www.ondeck.com/

OnDeckはアメリカ合衆国ニューヨーク発のフィンテックベンチャーです。これまで紹介した消費者向けローンのオンラインマーケットプレースとは異なり、中小事業者向けの貸し出しを行っています。個人向けの消費者金融と同様に、従来の金融機関は融資を必要とする中小事業者の与信審査に掛かるコストを下げることができず、融資を希望する中小事業者は本来の実力や貸し倒れリスク以上に高い利率を受け入れたり、融資の実行までに相当の期間を要してしまうなどの困難に直面していました。OnDeckはビッグデータ解析を用いて与信審査を即時化し、従来よりも低い金利、スピード融資を実現しました。会計システムが電子化された事により解析用のアルゴリズムがリーチできるデータが増えた事が要因になっています。

10分で審査が完了する中小企業向け小額融資「Kabbage」 企業名/Kabbage アメリカ

Kabbage
https://www.kabbage.com/

Kabbageはアメリカ合衆国アトランタ発のフィンテックベンチャーです。中小事業者向けの小額ローンをオンラインで提供しています。100%オンラインで完了する、簡単な審査申込書を入力して送信すれば、Kabbageはその内容に基づいて自社が蓄積した膨大なデータを用いて分析を行い、10分ほどで与信結果を通知し、融資を実行します。月末の債務の返済等、運転資金の調達に苦しむ中小ビジネスオーナーの共通の悩みである、「時間もなければ、審査に必要な資料を収集・作成するリソースもない」といったニーズに答えています。ダッシュボードやアプリケーション等で返済状況を確認したり、追加融資の申込を行うことも可能です。

インドのソーシャルレンディング「Faircent」 企業名/Faircent インド

Faircent
https://www.faircent.com/

Faircentはインド発のFintechスタートアップです。ソーシャルレンディングサービスであり、借り手と貸し手をオンラインでマッチングします。彼らもこれまで紹介してきた事業者と同様にビッグデータと解析アルゴリズムを用いて独自に融資希望者の与信審査を行います。Faircentは個人・ビジネス両方に対応しています。インドではクレジットスコアを持たなかったり、過去のトランザクション自体が全くないユーザーも未だ多く、ソーシャルメディアでの発言やログイン、投稿の頻度といった、間接的で定型化されていないデータも分析の対象にし、同一の行動パターンを持つプラットフォーム上のユーザーの返済実績を掛け合わせる事で与信審査を行っています。

ミレニアム世代を自社の顧客に「ZAML」 企業名/Zestfinance アメリカ

ZAML
https://www.zestfinance.com/

Zestfinanceはアメリカ合衆国ロサンゼルス発のフィンテックスタートアップです。彼らは融資を引き受ける金融事業者に代わって、債務者の与信審査を高精度で行う「ZAML」というサービスを提供しています。従来型の与信審査では50程度の要素しか考慮することができませんでしたが、マシンラーニングを活用する事によって何千要素ものデータを考慮する分析を数秒で行える技術水準を実現しています。ミレニアム世代のようなクレジットスコアがなく、過去のトランザクションも少ないですが、実際には十分な返済能力がある潜在顧客を見逃す事がなくなる為、融資機会を拡げる事が可能です。

金融データからマーケティングインサイトを「Cardlytics」 企業名/Cardlytics アメリカ

Cardlytics
http://www.cardlytics.com/

Cardlyticsはアメリカ合衆国アトランタ発のフィンテックベンチャーです。Cardlyticsは金融事業者と提携し、大量のユーザーの購買データをプラットフォーム上で提供し、マーケティング担当者がデータドリブンな意思決定をするための分析ソリューションを提供しています。例えば、小売店のマーケティング担当者であれば、自社のユーザーが自社の店舗以外ではどのような購買行動をしているのかを、金融事業者が持つ決済データから把握することが可能で、競合を意識した効果的なマーケティング施策や広告出稿先の決定をサポートします。マーケティング施策の効果測定もより具体的な形で実行することができます。

投資家同士のビッドで条件調整が行われるソーシャルレンディング「FundingCircle」 企業名/FundingCircle イギリス

FundingCircle
http://www.fundingcircle.com

FundingCircleはイギリス発のFintechベンチャーでソーシャルレンディングサービスを提供しています。他のソーシャルレンディング事業者と同様に融資を希望する事業者はオンライン上のアプリケーションフォームで短時間に審査申込を行うことができます。このサービスの特徴は審査が完了した案件はプラットフォーム上でリスティングされ、投資を希望する投資家同士でビッドが、そして条件の調整が行われるシステムです。人気の案件であれば、条件が当初の条件より更に良くなる可能性があります。

ショッピングローンをワンクリックで「Affirm」 企業名/Affirm アメリカ

Affirm
https://www.affirm.com/

Affirmはアメリカ合衆国サンフランシスコ発のフィンテックベンチャーです。オンラインショッピングを運営するEC事業者に、簡単に追加できるショッピングローン機能を提供しています。ユーザーはAffirmのアカウントを持っていれば、チェックアウト時にワンクリックでショッピングローンに申し込むことが可能です。Affirmはユーザーがアカウントを作成する時にオンライン上でいくつかの項目の入力を要求し、既存のクレジットスコアはもちろん、自社で有する大量のユーザーデータをマシンラーニングアルゴリズムを用いて解析し、リスク算定を行い、そのユーザーへのショッピングローンの提供可否を決定します。ユーザーは決済の選択肢が増え、EC事業者は決済手段を増やすことができます。

ロボット投資アドバイザー「SigFig」 企業名/SigFig アメリカ

SigFig
https://www.sigfig.com/

SigFigはアメリカ合衆国サンフランシスコ発のフィンテックベンチャーです。彼らが提供するのは機械学習アルゴリズムによるビッグデータ解析と人工知能によるロボット投資アドバイザーです。401KからIRA(個人積立退職年金)や証券会社の資産管理システムのデータをSigFigのアカウントに紐付けると統合的なポートフォリオを作成してくれるだけでなく、ロボットがポートフォリオを分析し投資助言を行ってくれます。従来の人間による投資助言サービスの1/10以下の手数料でロボアドバイザーによるデータドリブンな投資助言サービスが受けられるようになりました。

マシンラーニングポートフォリオマネジメント「Path」 企業名/Wealthfront アメリカ

Path
https://www.wealthfront.com/

Wealthfrontはアメリカ合衆国カリフォルニア州レッドウッドシティ発のフィンテックベンチャーです。彼らが提供する「Path」もマシンラーニングによるビッグデータアナリティクスを活用したポートフォリオマネジメントシステムです。ユーザーに発生し得る様々な投資シナリオがポートフォリオに与える影響を自動でシミュレーションして即時に解答を得られるだけでなく、様々なアカウントに紐付いた株式等の資産を一括で管理することで、人工知能が節税対策が可能な要素をポートフォリオ内で自動認識し、必要な手続きを完了してくれます。

ロボアドバイザー×人間のスペシャリスト「Betterment」 企業名/Betterment アメリカ

Betterment
https://www.betterment.com/

Bettermentはアメリカ合衆国ニューヨーク発のフィンテックベンチャーです。2008年創業で2016年には約500億円相当の企業価値評価を受けています。既に紹介した2つのデジタル資産管理×投資助言サービスを提供する企業と同様に、統合型ポートフォリオマネジメントサービスや節税手続きの自動化サービス等が提供されています。彼らが重視するのはテクノロジーを最大限活用しつつも、その裏にあるビッグデータ解析によって得られる結果の適格性のチェックや、手続きの適法性を担保する、”人間の” 金融の専門家にアクセスできる点です。

クレジットスコアを改善して更に活用できる「Credt Karma」 企業名/Credt Karma アメリカ

Credt Karma
https://www.creditkarma.com/

Credt Karmaはアメリカ合衆国サンフランシスコ発のFintechベンチャーです。アメリカではEquifax、Experian、TransUnionといった企業が個人のクレジットスコア(FICOスコア等)を決定し、ローン組成やクレジットカード発行を行う金融事業者に提供し、審査が行われています。このスコアはこれまでは個人が気軽に取得することができませんでしたが、Credit Karmaはこのスコアを無料で確認できるサービスを提供しています。ユーザーはクレジットカードの取引履歴をCredt Karmaと共有することで、「スコアを上げる為にはどうすれば良いのか」、「なぜスコアに変動があったのか」といった助言を受ける事ができます。他のソーシャルレンディングサービス等と連携しているので、ユーザーはCredit Karmaの持つ自身の与信情報を利用して他のプラットフォームでスムーズに融資を受ける事が可能です。

エクイティファイナンスをもっと気軽に「Circle Up」 企業名/Circle Up アメリカ

Circle Up
https://circleup.com/

Circle Upはアメリカ合衆国サンフランシスコ発のフィンテックベンチャーです。これまで紹介してきたソーシャルレンディングを扱う企業がローン(債務)を対象にするのに対して、Circle UPはエクイティ(資本)を対象に、オンライン上のマーケットで投資家と投資を受けたいスタートアップの創業者をマッチングしています。食料品や消費財などの領域で起業するアーリーステージの企業に対象を限定していることと、Helioというマシンラーニングアルゴリズムを活用し、投資家やベンチャーキャピタルに代わって何百万という要素を解析して投資意思決定に有用な情報を提供していることが特徴です。既に、200以上の企業が合計で約400億円弱を調達しています。

奨学金ローンを健全に「SoFi」 企業名/SoFi アメリカ

SoFi
https://www.sofi.com/

SoFiはアメリカ合衆国サンフランシスコ発のFintechスタートアップです。多額の学費の支払いを賄う為に奨学金負債を抱える学生を対象に、ビッグデータ解析に基づいたリスク分析を行い、奨学金より有利な条件で借り換えローンを提供します。デフォルトリスクを下げるためにキャリアアドバイスを行ったり、コミュニティイベントを行う等のアナログな施策も実行しており、返済原資になる借り手の将来の収入を高めようとしています。奨学金以外にも資産形成サポートや家族のリファイナンス等、関連するサービスを各種取りそろえています。

人事と財務と金融を繋げる「Workday」 企業名/Workday アメリカ

Workday
http://www.workday.com/

Workdayはアメリカ合衆国カリフォルニア州プレザントンで2005年に創業した企業です。既に上場を果たし彼らの提供する「Workday」は世界的にシェアを拡大しています。エンタープライズ向けの人事・財務管理ソリューションで、日本ではHRテック等と呼ばれ注目を浴びている領域です。人事データと財務データを統合し戦略的にマネジメントすることにより、個々の人財の価値算定や退職リスク等を予測して人事マネジメントに役立てたり、それらを財務計画やリソースプランニング等と紐付けて意思決定に有用な情報として把握することが可能です。マシンラーニングの活用により正確な将来予測や、これまで発見できなかったインサイト等を得られる機能も提供されています。日本ではコンサルティング企業が導入支援をリードしており、既に日立やユニクロ、楽天等の企業が採用しています。

翌日着金のto Cレンディングサービス「Avant」 企業名/Avant アメリカ

Avant

http://www.avant.com/

Avantはアメリカ合衆国シカゴ発のフィンテックスタートアップです。Avantもまた、個人向けのローンを行っています。他のレンディング計Fintechスタートアップと同様にオンラインのフォームに入力された融資希望者の情報に基づき、ビッグデータアナリティクスを行いリスク算定し融資の実行や条件を即時に判断します。最短で翌日には着金します。彼らも競合と同様にリファイナンスやクレジットカードの斡旋を自社のサービスとしてラインナップしようとしていましたが、現在は(リストラを伴う)計画の変更を行い、海外展開も含めて新たな計画を練っています。

リアルタイム与信分析で即時ショッピングローンを組成「Klarna」 企業名/Klarna スウェーデン

Klarna
http://www.klarna.com/

Klarnaはスウェーデンのストックホルム発のフィンテックベンチャーです。彼らが提供するのはECサイト等に簡単に導入が可能な総合的決済ソリューションです。カートにあらゆるブランドの決済手段を提供するだけでなく、ユーザーにショッピングローンも提供します。Klarnaはビッグデータアナリティクスに基づいて、「その時点の」ユーザーの与信を即座に決定し、ショッピングローンの組成可否を決定します。18以上の国で65,000以上のショップに利用されています。

悪質なトランザクションだけを排除する「Freezai」 企業名/Freezai アメリカ

Freezai

http://www.feedzai.com/

Freezaiはアメリカ合衆国カリフォルニア州サンマテオ発のデータ解析に強みを持つベンチャーです。ビッグデータを用いた解析でショッピングやアカウントの開設時に、瞬時に悪質なユーザーによる申込を検知し排除します。既存のシステムに簡単にインテグレーションすることができます。ユーザーは特別なステップを踏む必要がなく、結果も瞬時に得られる為、良心的な好ましいユーザーを煩わせることなく、プロセスを完了させることができます。

今回の記事では、金融領域のビッグデータ活用事例を紹介してきました。金融業界はビッグデータやモバイルの普及といった要因以外にも、ブロックチェーンによる非中央集権的で低コストな取引認証技術や仮想通貨の誕生といった要因により、大きな変化が訪れています。これまで、身近ではなかった投資や資産運用といった金融サービスが、スマートフォンから利用可能になっています。今回、紹介した新しいカタチの金融サービスは日本の事業者からもリリースされているものが多いので、是非チェックしてみてください。ビッグデータは金融以外にも、あらゆるビジネス領域で導入・活用が進んでおり、大企業を中心に、「社員一人ひとりがビッグデータを活用できる環境」を構築し競争力をつけようと、データ解析ソリューションの導入や社員教育を進めています。誰もが、ビッグデータを操りビジネスを進める日はすぐそこまで来ているのかもしれません。