海外・国内における通信業界のIoT活用事例20選

海外通信機器

通信業界はIoTの普及・利用の加速において大きな責任を担っています。これまで通信会社には大容量で高速なネットワークが期待されていました。その結果、現在では高速なブロードバンドがモバイルでも利用可能になり、産業分野ではビッグデータアナリティクスやマシンの遠隔制御といった事が実現できるレベルまで進化しました。一方、IoT時代に必要なネットワークには、これまでとは反対の特性が求められており、通信キャリアはIoT時代に適した低消費電力、低設置コストといった特性のネットワークインフラの構築を進めています。今回の記事では海外及び日本でそれぞれの通信キャリアがどのようにIoT時代に向けてネットワークを整備しているのかという状況が垣間見られる事例を紹介していきます。

台湾を先進的なスマートアイランドに導く「LoRaホットスポット」 企業名/亜太電信 台湾

アジア・パシフィック・テレコム

http://www.aptg.com.tw/

亜太電信(アジア・パシフィック・テレコム)は台湾のフォックスコングループの通信キャリアです。LoRaWANを採用したLPWAネットワークを、2016年から台北市を手始めにに新北市、桃園市の計500カ所に「LoRaホットスポット」として設置し、台湾をIoTスマートアイランドにする計画です。IoTのインフラが早期に構築されれば、様々な事業者がIoT関連サービスを提供する土壌が整い、台湾の各都市がアジアの中でも有数のスマートシティに変貌を遂げる可能性が高まります。特にLoRaWANはトラッキングと呼ばれるGPSを用いない通信地点の位置特定に優れており、観光や高齢者の徘徊予防といった台湾の注力分野での活用が期待されます。

ソフトバンクも採用するIoT時代のネットワーク「LoRaWAN」 企業名/ThingPark フランス

LoRaWAN

https://www.actility.com/

フランスのアクティリティ(Actility S.A.)はLPWA(Low Power Wide Area)ネットワーク業界のリーターともいえる企業です。そのアクティリティが日本で無線通信サービス等を提供する電気通信事業者ソフトバンクと提携し、IoT時代に必要な広域かつ低消費電力なネットワーク規格の中でも、最有力な「LoRaWAN」を採用したネットワークインフラの整備に取り組んでいます。 

世界展開を進めるソラコムのIoTネットワーク「SORACOM Air for LoRaWAN」 企業名/SORACOM 日本

SORACOM

https://soracom.jp

ソラコムは日本のIoTネットワークソリューションを提供する企業です。IoTビジネスを構築したいビジネスプレイヤーに対して、大手移動体通信キャリアのモバイルネットワークをバックボーンにしたSIM、ゲートウェイ、閉域接続、クラウドリソースといったIoTビジネスにおいてインフラを構築するソリューションを揃えています。ソラコムもLPWAへの対応を開始しており、対応するゲートウェイの提供を既に開始しています。設置コストが安価かつ免許が不要な周波数帯を使用できるLoRaWANをLPWA技術として採用しています。更なる付加価値として、ユーザー企業が設置したゲートウェイを、複数の事業者で共有できるという「LPWAのシェアリングエコノミー」を実現するサービスも提供しています。

オランダのスマートシティでも「LoRaWAN」 企業名/KPN オランダ

LoRaWAN

https://www.kpn.com/zakelijk/grootzakelijk/internet-of-things/en/lora.htm

KPNはオランダの大手通信事業者です。KPNはビーコンメーカーのGlimworm Beacon社や大学等の研究機関と提携し、オランダのアムステルダムで、広域にLoRaゲートウェイと3,000個以上のBeaconを設置し、スマートシティの実験に必要なインフラを整えました。「Amsterdam Beacon Mile」と名付けられた、このインフラ上で観光客向けのサービス等が既に提供されています。KPNは2016年時点でオランダ全土へのLoRaネットワークの整備を完了しています。

総合IoTコンシェルジュサービス「Datavenue」 企業名/オレンジ フランス

Datavenue

https://datavenue.orange.com/

オレンジはフランスの大手通信事業者です。フランス全土へのLoRaネットワークの整備を進めており、2017年中に2600市町、120の都市において利用可能なレベルまで整備することを目指しています。オレンジの提供する「Datavenue」は、データアナリティクスに必要なリソースやプラットフォームを提供するだけでなく、デバイスやセンサーの選定といった導入部分からトータルでコンサルティングを行うサービスです。

韓国南部のテグをスマートシティ実験都市に変貌させた「LoRaネットワーク」企業名/SKテレコム 韓国

LoRaネットワーク

https://news.samsung.com/global/samsung-electronics-to-jointly-build-sk-telecoms-world-first-nationwide-lorawan-network-dedicated-to-internet-of-things

SKテレコムは韓国の大手通信事業者です。SKテレコムもIoT向けLPWAネットワークの整備において、LoRaWANを採用しました。韓国で最も推進力があるサムスン電子とパートナーシップを締結し、既に韓国全土にIoT通信インフラを構築しています。サムスンはスマートシティソリューション市場でのシェア拡大を狙っており、韓国全土に先駆けてLoRaネットワークを整備した南部の都市テグは、随所にモニタリングセンサーが設置され、研究やスタートアップが集う、韓国で最も先進的なスマートシティ実験都市に変貌を遂げています。

IoTビジネスの種を蒔くSwisscomも「LoRaWAN」を採用 企業名/Swisscom スイス

LoRaWAN

http://lpn.swisscom.ch/e/

Swisscom(スイスコム)はスイスの大手通信事業者です。スイスコムは過去に自社主催のIoTハッカソンを行う等、IoTサービスやプロダクトを生み出そうとする研究者やスタートアップを支援する姿勢を見せていました。2016年には、IoTビジネス支援を更に加速するLPWAネットワークの設備を、LoRaWANを採用して行うことを決定しました。2016年中にスイスの大半をエリア化し、2017年には屋内対策も行う予定であることを表明しています。

老朽化したアメリカの水道インフラを支えるIoTネットワーク 企業名/Senet アメリカ

水道インフラネットワーク

http://www.senetco.com/network/

Senetは北アメリカを中心にエリアカバーするアメリカで最初のLPWAネットワーク特化型の通信キャリアです。2009年に発足した新興通信事業者でありながら、既に25の州、225の都市でカバレッジを実現しています。彼らも、他の多くの通信事業者と同様にLoRaWANを採用しており、LoRaの設置の容易さを活かし、ユーザーから要望があれば60日以内にエリアカバーする方針を打ち出しています。アメリカでは水道インフラの劣化が問題になっており、水道事業者が問題解決に取り組んでいますが、モニタリングを実施するための通信インフラにSenetのLPWAネットワークが採用されています。

TELE2の総合IoTソリューション 企業名/TELE2 スウェーデン

TELE2

http://www.tele2iot.com/cases/

TELE2はスウェーデンに本社を置く通信事業者です。TELE2は他のLPWAネットワークを整備する通信事業者とは異なり、需要がある地域に限定的にLoRaWANを採用したIoTネットワークを構築しています。彼らはトータルIoTソリューションプロバイダーとして、クライアントのIoTビジネスのステージを開発、設置、運営、最適化の4つのステージに分け、ステージごとに適したソリューションを提供することができます。既に事例も豊富でメーカーやヘルスケア事業を手がける事業者の成功事例が公開されています。2016年には第二の都市ヨーテボリへのネットワーク整備を行っています。

IoTの重要課題に取り組む研究施設「Interoperability Lab」 企業名/everynet

everynet

http://everynet.com/

everynetはグローバルにLoRaWANベースのLPWAネットワークの普及を推進する企業です。同社が提供する「Interoperability Lab」はLoRaWAN向けのデバイスやアプリケーションを開発するメーカーに、同社が整備するLoRaWANネットワーク上で”相互利用可能性=Interoperability”を確保する為の試験機会を提供します。2016年11月にはフロリダとフィンランドのエスポーに2つの新しいラボを開設したことを発表しました。

もう一つの有力LPWA規格NB-IoTに対応するチップセット「Boudica」 企業名/ファーウェイ台湾

huawei

http://www.01net.it/boudica-nb-iot-huawei-nel-2017/
http://www.huawei.com/en/news/2016/10/Huawei-NB-IoT-Solution

「Boudica」は台湾のファーウェイ社が製造する、携帯電話の標準仕様を策定する標準化団体3GPPが推進するLPWA規格であるNB-IoTに対応したチップセットです。NB-IoTはLTEベースの技術で、LTEの通信速度を大幅に落とすことでIoTに適した仕様にしています。NB-IoTは日本国内でも大手携帯電話事業者が導入を検討中で、2018年中に商用でネットワーク展開される可能性がありますが、日本に先駆けて中国の深センでは2016年9月からチャイナ・テレコムが水道事業者と共同してNB-IoTをスマートメーターに活用するフィールド試験を開始しました。

4億人をカバーするLoRaネットワーク「India IoT」 企業名/TATA インド

IOT

http://www.silicon.co.uk/networks/m2m/mwc-2017-hpe-tata-iot-network-206482
https://www.tatacommunications.com/products-services/enterprises/mobility/india-io

インドの大手通信事業者TATAもIoT向けLPWAネットワークの整備において、LoRaWANを採用しました。先駆けとしてデリーやムンバイでLoRaWANをPOC(概念検証)向けに提供していましたが、今後2年以内にインド国内の1900の都市に拡大し、4億人以上をカバーする予定であることを表明しています。TATAはPOCにおいて資産・エネルギー管理、スマートシティ、産業用ウェアラブル等の35種類の実験を行っていましたが、そのうち21種類の実験でNB-IoTでは期待する性能の発揮が難しいと判断された事が、LoRaWANを推進する決め手となったと、TATAのトレース副社長は語っています。

京セラが独占権を獲得したLPWA規格「SIGFOX」 企業名/SIGFOX フランス

SIGFOX

http://www.sigfox.com/

「SIGFOX」はフランスのSIGFOX社が開発したLPWAネットワーク規格の1つで2009年から提供を開始しています。ヨーロッパを中心に普及が始まっており、2018年までに60カ国でのサービス展開を目指す方針を示しています。SIGFOXは1つの国・地域に対して1つのオペレーターに限定することを原則としており、日本では京セラが独占契約を締結し、ネットワークの整備を進めています。京セラはSIGFOX普及のパートナーとしてKDDIとも提携しています。KDDIは3GPPベースのNB-IoTとCat-M1、280MHz帯のFlexNetの検証を既に進めていますがこの「SIGFOX」も推進していく見込みです。

低周波数の特性を活かしたLPWA規格「Flexnet」 企業名/Sensus アメリカ

Flexnet

https://sensus.com/

「Flexnet」はアメリカのSensus社(Xylem社が2016年に買収)が開発したLPWAネットワーク規格の1つです。920MHzや2.4GHzといった高周波数を利用するLoRaやSIGFOXといった他のLPWAネットワークと対照的に、到達可能性が高い低周波数の280MHz帯を利用するLPWAネットワークで、建物内部や水道管内といった深部へのセンサー設置が必要な建設分野やスマートシティ関連での利用が期待されています。日本ではKDDIが「Flexnet」を活用して山間部での遠隔水道検針の検証を行っています。

ソフトバンクも「LoRaWAN」を採用し法人向けネットワークソリューションを強化 企業名/SoftBank 日本

ソフトバンクLoRaWAN

http://www.softbank.jp/corp/group/sbm/news/press/2016/20160912_01/

日本のソフトバンクは2016年度中にIoT向けLPWAネットワークの提供を開始し、規格として「LoRaWAN」を採用しました。ソフトバンクはこれまで法人向けのネットワークソリューションとしてSmartVPN等でIP-VPNや専用線、インターネット接続を提供してきましたが、顧客のビジネスに低消費電力なIoTネットワークの需要が年々高まっている事からLPWAの整備を加速しています。ソフトバンクはLTEベースのNB-IoTやCat1・CatMの検証も同時に進めており、KDDI同様に複数の異なる特質を持ったLPWA規格を用いて、様々なIoTビジネスのニーズに対応すべく準備を進めています。

トータルIoTソリューション「GIoT」 企業名/Gemtek 台湾

gemtek

http://www.gemtek.com.tw/

Gemtekは台湾のワイヤレスブロードバンドソリューションを提供する企業です。彼らの提供する「GIoT」はLoRaベースのLPWAネットワークと、LoRaネットワークに対応するゲートウェイやセンサーといったハードウェア、導入支援や運用サポートといったIoTビジネスに必要な機能を幅広く法人向けに提供します。更に、環境モニタリングやパーキング等の監視等を実行する為のアプリケーション群もカバーし、まさにIoTのトータルソリューションと呼ぶことができます。Gemtekは台北市政府等と提携して台北のスマートシティ化を推進しています。

インダストリアルIoTを支援する総合ソリューション「Smart Services」 企業名/euromicron ドイツ

Smart

https://www.euromicron.de/en

euromicronはドイツのビルや都市インフラ等のデジタルスマート化を推進する企業です。スマートシティやスマートインダストリーといった産業分野を中心にIoTソリューションを提供しています。彼らはこれらのソリューションを幅広くドイツ国内の事業者に提供する為のネットワークインフラを構築する為に、Telent社と提携しLoRaベースのLPWAネットワークの構築を進めています。ドイツは国家を挙げてインダストリアルIoTを進めており、高品質かつセキュアなネットワークが求められる環境の中、euromicronは50年以上にも及ぶネットワークオペレーターとしての経験から活躍が期待されています。

KDDIが提唱するIoTの先の概念「Web of Things」 企業名/KDDI 日本

Web of Things

http://www.kddi.com/co/r-and-d/akaruimirai/2016spring/02/

KDDIは既にIoT向けにKDDIの法人向けネットワークソリューションである「Wide Area VIrtual Switch」と接続できるクラウドリソースやプラットフォームソリューションを提供しています。KDDIも他の通信キャリアと同様にIoT時代に向けて低消費電力で低コスト設置が可能なLPWAネットワークの整備を進めるべく、複数のLPWA技術を検証しています。KDDIは「WoT=Web of Things」という概念を提唱しています。これは、IoTにおいて上流レイヤーであるアプリケーション層、そしてWebをプラットフォームにしてデバイス同士が連携して制御したり、そのことで実現するサービスまでを対象としてサービスや技術の設計を行う広い概念です。より広い視点でIoTを捉えることで、プラットフォームやメーカーの競争による仕様や技術の分断を避け、ありとあらゆるデバイスやデータがシームレスに連携するIoTを目指しています。

LoRaWANに対応する「GPSトラッカー搭載ゴルフカー」 企業名NTT西日本 日本

GPSトラッカー搭載ゴルフカー

https://www.ntt-west.co.jp/news/1612/161216a.html

NTT西日本もLoRaベースのLPWAネットワークの実証実験を進めています。この事例では、LPWAを整備したゴルフ場でカートの位置情報を管理するシステムの検証を行っています。これはゴルフ場内で25台のカートにGPSトラッカーを装着し、送信された位置情報に基づき、カートの最適配置を行う実験です。ゴミ収集車や除雪車、農業機器等を管理する事業者や自治体での応用が可能で、資産の有効活用に繋がることが期待されています。

WebベースのIoTプラットフォーム「Thing Space」 企業名/ベライゾン・ワイヤレス アメリカ

Thing Space

https://thingspace.verizon.com/

アメリカの大手通信事業者であるベライゾンが提供する「Thing Space」はIoTデバイスの開発や管理を行うことができるWebベースのIoTプラットフォームです。クラウド上でデータ解析リソースやビジュアライゼーション機能を提供し、顧客のIoTビジネスによる価値創造を総合的にサポートします。様々な種類の外部のクラウドサービスをサポートしている為、追加のミドルウェアの開発が不要です。これにより、開発者のコストや開発時間の短縮に繋がっています。2017年にはサイプレス社のIoT開発プラットフォームと連携を実現するなど相互利用可能性を高めています。

今回の記事ではIoT(Internet of Things)には欠かせないLPWAネットワークの整備状況を中心にご紹介してきました。あらゆるモノが繋がり、その繋がりが価値を発揮するためには優れたネットワークが必要で、それぞれのビジネスの目的やデバイスに適した性能を備えたネットワークが求められます。今後、IoTのビジネスやサービスでの活用は更に加速する事が予想され、読んで頂いている方が目にしたり、実際に活用したりする機会が増えることは間違いありません。世界中でご紹介したようなIoTレディなネットワークが整備された時には、IoTの普及が更に進み、IoTによるインパクトが増幅し、実感できる劇的な変化が起こるかもしれませんね。